編者の編み物20

新しい年の1月も、終わりに近づいています。当初は、雪国に積もる雪も少ないと言われていましたが、今や冬本番となり、都心でも、とても寒い日々が続いています。

今日は、故・相田黄平先生の「風立つ猪苗代湖」という作品をご紹介します。

黄平先生は、冬の東北に足を運ばれては、雪国の風景を描かれてこられました。良い絵を描くためには、現場に出向いてスケッチをして、その場の風景だけでなく、雰囲気や臨場感をも表現することが大切だと、よく仰っていたように思います。

「風立つ猪苗代湖」という作品は、黄平先生の著書である『四季の墨絵~創作のこころみ~』という本に、作画のいきさつが書かれています。

 

 一月半ばの猪苗代湖畔に立っての写生でしたが、何枚もの毛のものを重ね着していても、 吹きつける寒風は、身体の芯まで突き刺すようで、スケッチに淡彩で少し色をつけるつもりでしたが、絵具をとく筆が、パレットの上でジャリジャリと、そばから氷ってしまって、彩色などできたものではありません。右手遥かな対岸など、全く見えませんが、白波を立て、うねりながら打寄せる波頭と、鋭い笛のような風の音を聞いていると、日本で三番目に大きいという湖面の広がりが実感として伝わってくるようです。

 図は、思い切って空を広くとり、湖面の広がりと、荒涼とした真冬の寒々とした感じを表現したいと思ったわけです。

 『四季の墨絵~創作のこころみ~』より 1979年 著:相田黄平

 

横からのたたきつけるような風に耐えながら、昼間でも氷点下の湖畔に立ち、必死にスケッチをして、描かれた作品であるということが見てとれます。その場に居合わせていない我々でも、絵の中に入り込んでみると、冬ならではの曇天と、寒空に吹き続ける風の中、ただ黙って立ち尽くす木々に、たくましさすら感じられます。

今日の猪苗代湖にも、絵のような景色が広がっているのかもしれないなぁと、ふと想像してみたりします。